寺宝

興福院には本尊阿弥陀三尊、阿弥陀二十五菩薩来迎図のほか、唯一無二ともいえる徳川家ゆかりの江戸掛袱紗(いずれも重要文化財)など、さまざまな寺宝が伝えられています。

丸印は本堂、四角印は客殿で拝観できます。しるしのないものについては、春・秋の特別拝観期間にご覧いただける場合は、お知らせいたします。

丸印本尊阿弥陀三尊像 ほんぞんあみださんぞんぞう

重要文化財
天平時代 木心乾漆造 漆箔(近世補修)
像高 中尊:阿弥陀如来89.1cm
左脇侍(向かって右):観音菩薩75.4cm
右脇侍(向かって左):勢至菩薩76.1cm

本尊阿弥陀三尊像は桃山時代の興福院再興の際にお迎えした仏様で、その由緒は明らかではありません。中尊の阿弥陀如来は親指と薬指で輪を作る下品中生(げぼんちゅうしょう)の珍しい印相をもち、庶民に寄り添う仏であることが示されています。また左右脇侍の観音菩薩、勢至菩薩はそれぞれ片足を踏み下げ、中尊にやや体を傾けます。本堂の内陣と外陣(げじん)の仕切りには飛天や楽器が素朴な筆づかいで描かれ、往生者を阿弥陀浄土へ迎える来迎(らいごう)のようすが、本尊を中心としてお堂全体で表現されています。

丸印五劫思惟阿弥陀如来坐像 ごこうしゆいあみだにょらいざぞう

すべての人々を救わんと「五劫(ごこう) 」という気の遠くなるような長い歳月にわたって思索や修行を重ねたために、頭髪が長く伸びた阿弥陀如来のお姿をあらわしています。奈良市内では東大寺勧進所や五劫院の御像がよく知られます。当山の御像は小像ではありますが、穏やかな童子のようなお顔立ちが愛らしい阿弥陀様です。

丸印法然上人像 ほうねんしょうにんぞう
(浄土宗の宗祖)

丸印善導大師像 ぜんどうだいしぞう
(唐代の浄土教の高祖)

釈迦如来坐像 しゃかにょらいざぞう

市指定文化財
江戸時代 木造 金泥 像高18.8cm

与願・施無畏印(よがん・せむいいん)を結ぶ釈迦如来坐像。底部には江戸時代に東大寺の大仏および大仏殿の再興に尽くされた公慶上人の花押(かおう)や墨書があり、大仏胎内の古木で造られた千体を超える仏像うちの1体であることがわかります。興福院4世清信尼は公慶上人(1648~1705)の実姉であったため、本像はその縁で当山に納められたと考えられます。均整のとれたお姿にあどけないお顔立ち、衣に金泥で施された截金(きりかね)文様も美しく、現存する同じ由緒をもつ仏像のなかでも際立つ秀逸さを呈しています。

四角印客殿 襖絵・障子襖絵 きゃくでんふすまえ しょうじふすまえ

重要文化財
江戸時代 紙本墨画淡彩

襖絵は、狩野派、琳派、大和絵などに通じた渡辺始興(わたなべしこう、1683~1755)筆で、61歳のときの作。障子襖絵は、狩野派の鶴澤探索(1729~97)の作。奥室の床の右には落款がみえます。

阿弥陀二十五菩薩来迎図 あみだにじゅうごぼさつらいごうず

重要文化財
鎌倉時代 絹本著色 縦137.6cm 横82.4cm
京都国立博物館寄託

往生者を阿弥陀浄土に迎えるために来迎する阿弥陀三尊を描いた来迎図。その後ろには17体の菩薩が続き、画面の右上には雲に乗った化仏(けぶつ)5体が描かれています。阿弥陀三尊はじめ、聖衆が雲に坐した姿であらわされるあたりに平安時代の気配を残しています。一方、色調は淡いパステル調でみずみずしく、大きく雲を引き、衣を長く翻して来迎する様子はスピード感にあふれ、新時代である鎌倉時代初期の作品と考えられています。

十三仏図 じゅうさんぶつず

市指定文化財
室町時代 絹本著色 縦98.7cm 横40.3cm

長禄2年(1458)、初七日の追善供養のため菩提講に寄進された1幅で、中世の紀年銘のある作品として貴重な作品です。十三仏図は、初七日から三十三回忌まで13回行われる故人の供養に用いられるもので、それぞれの仏事の本尊となる尊像が丁寧に描かれています。室町時代に広まった典型的な様式を踏まえたもので、下から上へと1段に3尊ずつ4段を描き、最上段の5段目には1尊を配します。本図は大正13年に当山へ寄贈されました。

御霊屋障壁画 おたまやしょうへきが

市指定文化財
江戸時代 金地著色
京都国立博物館寄託

徳川家代々将軍のご位牌を祀る霊廟である「御霊屋」は、禅宗様建築の落ち着いた佇まいをみせますが、内部には狩野派、琳派、大和絵などに通じた渡辺始興(わたなべしこう、1683~1755)による絢爛豪華な襖絵が描かれています。植物の描写に長けた始興の写実的な描写は圧巻で、「松に百合図」など20面が伝わっています。

法妙童子 ほうみょうどうじ
四角印2025年 秋の特別公開)

江戸時代 紙本著色 全3巻
京都国立博物館寄託

おもに室町時代に作られた絵入りの物語群の1つで、室町物語とも呼ばれます。社寺での絵解きや、絵本、絵巻として庶民に親しまれました。内容は、昔話、伝説、社寺縁起など多岐に渡りますが、「法妙童子」は貧しくとも親孝行な息子が、試練を経たのち、念仏の功徳によって母子ともに幸せになるという念仏功徳譚。興福院には江戸時代の写本が伝わります。紺紙に金泥で草花を描いた表紙、美しい彩色が特徴の大型奈良絵本です。

古葉略類聚鈔 こようりゃくるいじゅうしょう

重要文化財
鎌倉時代 紙本墨書
奈良国立博物館寄託

刺繡掛袱紗 ししゅうかけぶくさ
(江戸掛袱紗)

重要文化財
江戸時代 全31枚 各約50cm四方
京都国立博物館寄託

5代将軍徳川綱吉公が、愛妾の瑞春院に年始・中元などの祝儀を贈る際、贈り物に掛けたもの。興福院5世理信尼が正徳3年(1713)に江戸城に上がった際に、綱吉公の菩提を弔うためにと瑞春院から拝領し、伝わりました。赤、白、青、金などの布地に桜や杜若、菊、梅などの季節の草花、酒器、熨斗(のし)、宝珠などの吉祥文様、萬歳楽、長生などの縁起の良い言葉などがボリュームたっぷりに刺繡されます。袱紗の柄と贈り物が一致していた可能性もあるといわれ、その豪華絢爛ぶりは江戸時代中期の刺繡芸術の極みといって過言ではありません。

紅繻子地宝尽しと梅「万寿」字文様刺繡掛袱紗 紅繻子地宝尽しと梅「万寿」字文様刺繡掛袱紗
淡浅葱繻子地菊に酒器熨斗「福喜」字文様刺繡掛袱紗 淡浅葱繻子地菊に酒器熨斗「福喜」字文様刺繡掛袱紗
浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字文様刺繡掛袱紗 浅葱繻子地杜若と撫子に酒器「長生」字文様刺繡掛袱紗

金銅宝塔形舎利容器 こんどうほうとうがたしゃりようき

市指定文化財
江戸時代